SDGsへの関心の高まりと共に、ファッション業界でもエシカルファッション(Ethical Fashion)という言葉に注目が集まってきました。ですが、エシカルファッションといきなり言われても、なんのことだかという方も多いはず。

今日はエシカルファッションの意味や現状や問題点、どうすればエシカルファッションの取り組みに参加できるのかなど、エシカルファッションについて詳しく解説していきたいと思います。

先進国のために工場で働く海外の方々

エシカルファッションとは

エシカルという言葉は、直訳すると「倫理的な」という意味です。エシカルファッションにおける倫理とは、人や地域、社会や地球環境に配慮し、良識的な考えを持つこと。エシカルファッションとは、こういった倫理感をもって、ファッションに対して行う取り組みを指します。

例えば、毛皮などを使わないアニマルフレンドリーな製品、無農薬で地球環境に配慮した素材で服を作ったり、またそういった製品を購入するということも、エシカルファッションに参加することになります。 SDGsにおいては、ファッションに限らず、消費全般についてエシカルな考えを持っていこう、ということでエシカル消費という言葉が使われています。これは、 2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、特にゴール12に関連する取組となっています。

エシカルファッションの基準

エシカルファッションには一定の基準があります。2006年に設立された、ファッション業界の社会と環境の基準を変革する共同運動の開発を目的とした団体 “Ethical Fashion Forum” において、10の基準が定められました。

  1. 安価で使い捨て型の「ファストファッション」に反対する
  2. 生産する労働者の賃金・権利・労働環境を守っている
  3. 持続可能な生活を支える
  4. 有毒農薬や化学物質の使用問題に取り組んでいる
  5. 環境にやさしい素材を使用、または開発している
  6. 水の使用を最小限にしている
  7. リサイクル、エネルギーやゴミ問題への取り組みをしている
  8. ファッションの持続可能性を開発・促進している
  9. 取り組みを報告し、解決策を広めようとしている
  10. 動物の権利を守っている

エシカルファッションとサステイナブルファッションの違いとは

エシカルファッションと似た言葉に、サステイナブルファッションがあります。両者の違いについてよくわからないという方もいるのではないでしょうか。サステイナブルファッションは、訳すと持続可能なファッションという意味になります。ファッションについて、生産や流通において自然や社会に配慮し、持続可能なファッションへの取り組みをさします。

両者は、生まれた背景や歴史は違いますが、取り組みとして重なっている部分が多く、両者は同じ意味でとらえられることも多いです。

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エシカルファッションとファストファッション

エシカルファッションを理解する時に、ファストファッションを理解するとより理解が深まります。ファストファッションとは、最新の流行を取り入れた、商品を安価な価格で、短期間で大量に生産、販売するビジネスモデルです。

ファストファッションは消費者にとっては、安く魅力的な服を手に入れられるため、とても人気があります。しかし、その裏では、大量の廃棄問題が発生したり、短いトレンドに合わせて服を大量生産するために、海外の劣悪な環境の工場を使ったりと様々な犠牲の上に成り立っています。

ファストファッションと労働問題

ファストファッションを語る時に、よく議論されるのが労働問題です。多くのファストファッションは、海外の賃金が安い縫製工場を利用して洋服を作っているので、人件費を削減して洋服を生産することができます。

エシカルファッションは上記のような低賃金労働問題を解決するものです。例えば生産者に対して適切な賃金を支払っていること、適切な労働環境を確保していることを重視した活動を行います。

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環境問題にも対応するファッション

洋服を製造するにあたって製造工程によっては、環境に大きな影響を与えることがあります。洋服は綿を利用して作っています。綿を正常に育てるときには除草剤などを使用しないといけません。

発展途上国では必要以上の農薬を散布する地域もあります。また綿花の加工や染色をするときに科学物質が川に流れるといったトラブルも起こります。エシカルファッションは上記のような環境問題についても考えます。環境に負担をかけない製造方法を利用して洋服を作ります。そうすることによって川などを汚染せず地球の良好な環境を維持することを目指します。

エシカルファッションは人と地球環境に対応したファッションを指す言葉です

フェアトレードについて知っておこう

エシカルファッションに取り組む際は、フェアトレードを行いましょう。フェアトレードとは、直訳すると「公平な貿易」という意味になります。例えば、日本で販売されている安いコーヒーやチョコレートは、途上国で生産されたものを使用しています。安価な商品を生み出す場合、人件費を安くしたり、長時間労働をさせたりしてコスト削減をしている工場が多いです。

特にファッション業界でフェアトレードが注目されるようになったきっかけは、2013年の「ラナ・プラザ崩落事故」です。2013年、バングラデシュにおいて、8階建ての商業ビル、「ラナ・プラザ」が崩落しました。ラナ・プラザには、27のファッションブランドの縫製工場が入っており、そこで働いていた多くの若い女性が犠牲になりました。


この事故では、コスト削減を追求するため、ずざんな工事の上に建物が建てられ、違法な増築などを繰り返していました。多くの労働者達は違法な低賃金での労働を余儀なくされていたことが判明しましたが、ブランド側はそんな状況は知らなかったと否定しました。

上記のような安い賃金や長時間労働を強いられている弱い立場の労働者を守るために、フェアトレードは使われます。フェアトレードは認証ラベルが用意されていて、条件を満たしている各企業に交付されます。

エシカルファッションを行う際は、フェアトレードを行いましょう
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エシカルファッションに取り組んでいるブランド

アパレル業界においては、働く人だけでなく、服を購入する人についても、SDGsへの関心は高まっています。エシカルファッションに取り組んでいる日本企業やブランドは沢山ありますが、代表的な企業を上げておきます。

  • ユニクロ・・リサイクル、リユース、自然に配慮した素材開発
  • H&M・・リサイクルシステム「Looop」やペットボトルのリサイクル
  • しまむら・・商品廃棄ゼロ運動、環境配慮型副資材の導入
  • ZARA・・再利用可能資源の採用、プラスチック袋廃止
  • リーバイス・・節水加工技術の開発、リサイクル
  • パタゴニア・・リサイクル、農業技術開発など
  • 無印良品・・オーガニックコットン素材のシャツなど

この他にも、誰もが知っている多くの有名ブランドがエシカルファッションへの取り組みを行っていたり、また行政との協力、論文や研究が出されるなど、エシカルファッションを広げようという多くの試みが広まっています。

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最新の取り組み事例

また大手ばかりではなく、様々な企業がエシカルファッショへの取り組みを行っています。特に最近では、最新のテクノロジーと組み合わせたイノベーションが次々に起こっています。

インクジェットデジタル捺染機 エプソンMonna Lisa(モナリザ)

エプソンのMonnna Lisaは、アパレル製造における大量の廃棄水問題を解決するプロダクトです。ファッション業界は、世界の2番目に多くの水を消費し、なんと地球全体の水質汚染の原因の20%を占めるといわれています。

セイコーエプソンのインクジェットデジタル捺染印刷機「MonnaLisa(モナリザ)」 刷版洗浄に必要な水、廃棄インクの削減を実現しながら、精細なグラデーションや微妙な色調の再現を実現した革新的なプロダクトです。

Monnna Lisaの紹介ページはこちら

ブランドバッグの循環型シェアリングサービス「ラクサス」

ラクサスは、循環型のものを捨てない社会を目指すブランドバックのシェアリングサービスです。バッグを自由に交換してファッションを楽しむだけで、利用者はSDGsに貢献することができます。

世界最大級を誇るバッグの品揃えは、60ブランド40,000種類。全てのバッグが交換自由で定額使い放題。ラクサスは、これまで約6年間で55万回の貸し出しを行いましたが、現在廃棄になったバッグは一つもありません。(レディースが多いですがメンズも取り扱いがあります)

ラクサスの公式ページはこちら

国内初のエシカルファッションショップ・カチガワランドリー

カチガワランドリーは、日本に5人しかいない、型崩れしたシルエットを復元する技術を持つ職人が在籍するファッションショップです。ショップではただ単にエシカルにそった服を販売するだけにとどまらず、クリーニングやメンテナンスまで行っています。

長く丁寧に着るための洋服を納得して買うことができ、また服が疲れたらメンテナンスもすることができる画期的なショップです。

カチガワランドリーのショップはこちら

エシカルファッションジャパン

エシカルファッションジャパンは、日本初のエシカルファッション推進団体です。エシカルを当たり前として世間により広く認知
してもらうために、国内外のブランドのPRや情報発信、ワークショップやイベントの運営などを行っています。日本のエシカルな情報にふれたいと思ったら、一度覗いてみることをお勧めします。

エシカルファッションジャパンのホームページはこちら

エシカルファッションの課題とは

エシカルファッションという言葉は、とても耳障りがいいものです。エシカルファッションに関心を持っている、そんな自分がいることは、自分自身のブランド価値を高めてくれるように感じるかもしれません。しかし、まさしくエシカルファッション自体をファッションのように捉え、何かもを結びつけてしまうことで、かえって輪郭がぼやけてしまうということが業界では起こってきています。

また、エシカルなものは大量生産、大量消費には向いていません。エシカルなものばかりになっても、私たちは窮屈に感じるかもしれません。私達自身が本当にその取り組みに納得し、暮らしていくことが必要なのです。

エシカルファッションのために私たちにできること

では、エシカルファッションに私達が参加するためにはどういった取り組みを行えばいいのでしょうか。私達ができることで簡単なことは、エシカル認証マークが貼ってある製品、エシカルファッションに取り組んでいる企業の製品を購入することです。もちろん、店舗でも通販でも結構です。

また、服のリサイクルだったり、服を長持ちさせるなど、衣服を大切に扱うということからでも参加できます。本などで勉強したり、イベントに参加することも立派な活動です。

エシカルファッションに参加することは私達にとっては少し手間がかかることがあるかもしれませんが、それは長い目でみれば地球全体を豊かにすることに繋がります。


ファッションを愛するからこそ、ぜひエシカルファッションに関心をもっていただければ嬉しいです。

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