近年、エシカル消費が注目されるようになってきましたが、日本ではまだまだ浸透していません。
エシカルを実践するにはどうすれば良いのでしょうか。
ここでは、私たちの生活の中で欠かせない衣食住の中でも、衣の分野を担うアパレル業界に焦点を当てていきます。
アパレル業界におけるエシカルとはどんなものか、簡単に実践できるのか、生産者と消費者の観点から見ていきましょう
エシカルとは
そもそも、エシカルとは「倫理的」という意味があり、最近政府や自治体の広報で推進されているエシカル消費は倫理的な消費を意味します。
といっても、何が倫理的なのか簡単には理解できないのではないでしょうか。
エシカル消費とは、単に価格やデザイン、性能などで製品を選ぶのではなく、その製品を買って消費することで、自分以外の人や社会、地域、環境の役に立つかを考えて製品を選ぶことを意味します。
たとえば、大量生産された安い服はなぜ安く売れるのかを考えた時、低開発国で法外に安い賃金で働かされている労働者が生産していたとなれば、その製品を買うのは控えます。
また、高級な衣料でも、その素材である綿を生産するために大量の農薬が使われて地球環境が汚されている場合や子どもたちが学校にも行けずに栽培の手伝いをさせられていたらどうでしょうか。
やはり、買うべきではありません。
たった1人の選択は非力でも、エシカル消費が浸透し、多くの人が買わない選択をすれば、労働環境が改められるかもしれません。
逆に、環境に優しい素材で作られている、労働者に適正な賃金を払って作られているアパレル製品を買うことは、エシカル消費につながります。
サステナブルファッションの明示
もっとも、エシカル消費をしたくても、その製品が環境や人、地域や社会に優しい素材やプロセス、適正な対価で作られているかは簡単にはわかりません。
エシカル消費を推進するには、メーカーや販売者などもエシカルに取り組む必要があります。
そして、消費者にわかるよう、サスティナブルファッションであることを明示することが大切です。
素材の栽培の仕方や労働者への適正な報酬が与えられているかは、店頭に並んでいる衣料品やネットショップの画像を見ても判断することはほぼ不可能です。
そこで、アパレル業界としては、リサイクル素材や再生素材を使用していることや地球環境への負荷が少なく持続可能なオーガニック栽培の素材を使っていることなど、素材の情報を詳細に提供することや環境負荷に少ない工程で製造していること、処分後のリサイクルを考えて設計・製造していることを示すことが求められます。
また、アパレル業界でも、ただ環境や人権に配慮した製造や販売を行うだけでなく、無駄や廃棄が出ない取り組みも盛んになってきました。
なんでも新品を買う時代から、サブスクリプションサービスやシェアリングサービス、レンタルサービスの利用や買取店や古着屋の積極的な活用も、エシカル消費につながります。
近年ではデパートやブランドのショップが、独自で古着のリサイクルをすることや回収箱を設けるなど、売るだけのスタイルからの脱皮が図られてきました。
ファッションロスゼロ
ファッションロスは衣料品の廃棄のことで、アパレル業界では取り組むべき重要な課題の一つです。
国内のアパレルメーカーや商社などで結成された業界団体のJSFAでは、衣料品在庫の焼却廃棄ゼロに取り組んでいます。
「燃やさない、捨てない」を合言葉にし、商品を作りすぎない適量生産を推進するほか、季節商品など販売が終わった商品であっても新たな活用方法を探すことや循環させる工夫を重ねてきました。
たとえば、衣料品回収リサイクルの取り組みとして、商業施設と連携し、ブランドやメーカーを問わず、不要になった衣料品を回収し、再資源化や子ども服のおさがり・シェアリングサービスでリユースなどを行っています。
アップサイクルブランドの確立
再資源化の取り組みの一つとして、在庫として残った服や返品された服など、もはや着られることがない倉庫の中の服を再び商品化する取り組みも行われています。
これまでは廃棄、焼却されていた服を、黒染めの手法で新たに蘇らせるアップサイクリングブランドが設立されたのです。
アパレルメーカーの垣根を超えて設立されたブランドで、製造工程は環境に配慮した設備を整えた日本有数の染工所において、シンプルでロスの少ない染め方で製造されています。
もともとの素材や特性に合わせて染色の種類を使い分けることで、独自の風合いが生み出されます。
傷や汚れなどのダメージがあり、返品された製品であっても、新たな価値を備えた製品として生まれ変わることが可能です。
まとめ
アパレル業界におけるエシカルは、消費者がエシカル消費ができるよう取り組むことが大切です。
サスティナブルファッションやファッションロスの削減を図るために環境に優しい素材を使うことや再資源化などに取り組むのはもちろん、それを明示することやリサイクルイベントなどを通じて実践していくことが求められます。