ファッション業界における社会問題

ファッション業界の低賃金や長時間労働、児童就労問題

ファストファッションブランドが登場し、消費者は低価格でトレンドアイテムを手に入れられるようになりました。服の製造に多くの発展途上国の人々が携わっていることにより、低価格が実現できています。ファッション業界は華やかに見せますが、その裏では、低賃金や長時間労働、児童就労などの深刻な労働環境が大きな問題となっています。

ファッション業界の低賃金や長時間労働、児童就労問題

ファストファッションの裏にある労働問題とは?

ファストファッションは、着る側からすれば大変ありがたいものです。安いから気軽に手が出せますし、流行が変わったらまた新しいものを買えばいいのです。しかしそれは裏を返せば、それだけその服を作っている人がいるということです。価格を抑えるために安い労働力で大量生産し、流行に後れないために厳しい納期を押し付けられている労働者の存在を、私たちは忘れてはいけません。

バングラデシュで起こった「ラナプラザの悲劇」は、ファッション業界にいるものなら一度は聞いたことはあるのではないでしょうか。

低賃金で長時間労働させられる労働環境

ファッション業界の問題点について、もう少し詳しく迫ってみましょう。世界的に大量生産・大量消費社会が一般的になり、ファッション業界でも、低価格で大量の服を作り短いサイクルで商品を入れ替えています。シーズンごとにトレンドに合わせた商品を作る必要もあるので、常に大量の服を作っています。そのため、発展途上国の工場では、女性や子ども関係なく長時間労働が課せられています。また、裁縫工場は低賃金の上、出来高制がほとんどです。長時間労働して服を作らないと、平均的な収入が得られない場合が多いようです。

多くの発展途上国の人たちが、ファッションブランドの裁縫工場で生計を立てています。これは、ファッションブランドが発展途上国でたくさんの雇用を生み出しているからです。こうした国では通常、求人数は少なく転職することが難しいのが現状です。そのため、どんなに過酷な労働環境であっても、裁縫工場で働くしか道はないんです。欠勤すると仕事を失う可能性もあるため、体調が悪くても長時間労働をする人がほとんどだといわれています。

児童就労問題について

ファッション産業では、児童就労も大きな問題となっています。世界中には1億人以上の児童労働者がいるといわれています。数ある業界の中でも、ファッション産業は難しいスキルがなくても作業できる工程があるので、児童労働者も仕事ができます。そして児童労働者の多くは、家計が苦しく働かなければいけない状況に追い込まれています。そのため、低賃金で危険な作業をさせられたとしても、文句を言わず働き続けなければいけません。こうした児童のほとんどは1日中働いており、教育を受ける時間がないのが現状です。

これはファッション業界の課題だけではなく、その国での児童に対する権利の低さや教育制度が整っていないことも問題といえます。また、裁縫工場は製造過程で化学物質を使うため、児童の健康状態も問題の一つです。成長期を劣悪な環境で過ごすため、子どもの健康状態に多大なる悪影響を与えています。

児童就労問題

労働環境の改善を目指すためには

ファストファッションブランドが増え、驚くほど安い価格で服を手に入れることができるようになりました。ファッションが好きな人の中には、ワンシーズン着たら古い服は捨てるという方もいるのではないでしょうか。服を購入する時、消費者である私たちが少し意識をするだけでブランド側の考えや労働環境を変えることができるかもしれません。

労働問題などを改善するためのエシカルファッションについてはこちら↓の記事をご覧ください。
エシカルファッションの意味や問題点と今日から出来る取り組みとは?
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アパレル商品の廃棄問題を解決するSDGs

アパレル商品の廃棄問題を解決するSDGs

アパレル業界において深刻なのは、売れ残った衣料品の廃棄問題です。大量のファッションアイテムはすべて売れるわけではありません。中には大量に売れ残ってしまうものもあり焼却処分されます。環境問題などに関係するもので社会問題にもなっています。上記のような問題を解決するSDGsはどのような活動なのか知っておきましょう。

アパレル商品の廃棄問題を解決するSDGs

企業はどんな取り組みを行っているのか

SDGsはどんなものなのか

ファストファッションやブランドの洋服などは、売れ残る場合もあります。売れ残ったアイテムは焼却処分されるものも多く、一時は環境団体からクレームも来ました。SDGsはサスティナブルディベロップメントゴールという意味の言葉で、いくつかの要素から成り立っています。例えばすべての人を健康にする、貧困をなくすといった活動を行います。ファッション業界でも注目されている活動で、大量生産や環境問題に対応します。

リネームについて知ろう

アパレル業界が行っているSDGsの1つにリネームと呼ばれるものがあります。売れ残った洋服を廃棄するのでなく、再販をするものでもありません。タグを付け替えて別の商品として販売するものです。そうすることによって製造元や元となったブランドに傷をつけることなく商品を売ることができます。うまく利用すればアパレルの廃棄量を減らすことが可能です。ショーではヴィンテージアイテムを使ったり、オーガニックコットンのアイテムを取り入れるなど、環境に配慮したコーディネートも登場しています。

古い服を書き換える活動

ファッション業界では90年代などにリリースされた洋服を書き換える作業も行っています。古い商品は汚れているものや、型が古いものもあります。そこで形状をアレンジして染め直すことによって、新規商品として販売をしています。衣料廃棄が問題となっている状況において、売れ残った商品を再構築して販売する手法を用いることで、廃棄問題解決に取り組んでいます。再構築された洋服は基本的に一点物となっているので、同じものはありません。

ファッションショーを行い認知度を高めている

2020年には静岡市でSDGsの推進ファッションショーを行っています。ファションショーは2019年から開始されていて、のべ7230人が来場しました。毎回テーマを設けて、テーマに沿ったファッションショーを開催しています。スペシャルゲストやモデルの参加などもあり、多くの方にSDGsの重要性を発信しました。

衣料品の廃棄問題を解決してくれるSDGs

廃棄をなくし洋服の有効利用をするSDGsはアパレル業界の将来を担う

衣料品の廃棄問題を解決してくれるSDGsは多くの企業が取り入れています。例えば売れ残ったブランド品をリネームして販売する、過去に販売された洋服を再構築して新商品として売るといった活動を行っています。またファッションショーを行いアパレル商品の廃棄問題を世間に広めています。上記のような活動を行うことによって、少しずつ衣料品に関係する廃棄問題や環境問題は解決できます。

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サステイナブルファッションの意味とは?今日から出来る取り組みやブランドも紹介します。

話題のサスティナブルファッションとは

ファッションが好き。そして自然も好き。そんな方なら、サステイナブルファッションという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。サステイナブルとは、持続可能なを意味する言葉です。

サステイナブルファッションとは、限りある資源や不可逆的な地球環境に配慮し作られたファッションを指します。

最近、Sdgsという言葉が話題となっておりますが、サステイナブルファッションに興味をもって、意味を知りたい。サステイナブルファッションを着ることで、環境に配慮しながらファッションを楽しみたいという方も増えています。

でも、どうすれうばサステイナブルなファッションを楽しめるのか、また具体的にどういった取り組みがあるのかということを知らない方は多いと思います。

サステイナブルファッションの意味を知り、そしてそのためにできる行動を知ることで、あなたはより一層ファッションを楽しんでいくことができるでしょう。

話題のサスティナブルファッションとは

話題のサスティナブルファッションとは

サスティナブルファッションの特徴は、生産から販売、消費までの一連の流れにおいて、環境や社会にできる限りの配慮がされているファッションをいいます。

実はアパレル業界は、大量生産、大量消費を色濃く投影した業界です。服を1枚作るのに膨大な環境資源が使われています。農薬を使って土壌汚染をしながら植物を育て原材料にし、大量の石油を使って水を汚染し、二酸化炭素を排出、さらに、最近はサイクルの短期化が進み、毎年約100万トンの衣服が捨てられています。

サステイナブルファッションのメリット・デメリット

サステイナブルファッションには、メリットもあればデメリットもあります。心からお洒落を楽しみ、そして、自らが納得してサステイナブルな活動に参加するためにも、しっかりとメリットとデメリットを把握しておきましょう。

サステイナブルなファッションのメリットは、自分の体にも、そして地球環境にも優しいこと。自然素材を活かした服を着ることだったり、フェアトレードにのっとった服を買うということは、それだけでこの地球の持続可能性に貢献していることになります。

デメリットは、価格が高くなる、手間がかかる、という点です。例えば、無農薬で服の素材となる植物を育てるには、農薬を使うよりも当然膨大な手間がかかり、その分価格が高くなります。ファストファッションのように、安く手軽にといった価格では、なかなか手を出しづらいかもしれません。

サステイナブルな取り組みに参加することは、地球にとっても私達の未来にとっても大切なことです。だからこそ、消費者がしっかりと考え、理解して選ぶということが重要です。

企業、個人ができるサステイナブルな取り組みとは

では、具体的にサステイナブルファッションを実現するために、アパレルに関わる企業はどういった取り組みをしているのでしょうか。また、ファッションを楽しみたい自分自身が出来る取り組みにはどういったものがあるのでしょうか。

オーガニックコットンなど自然素材の利用

オーガニックコットンとは、無農薬のコットンです。農薬や化学肥料を使わない素材を利用することで、環境と身体に優しい素材で衣服を作ることができます。

環境に優しいものを選ぶことは、地球に優しくする、あなたが最も簡単にできるサステイナブルな取り組みの一つです。

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毛皮を使わない

多くの動物たちが、ファッションのために犠牲になっています。例えば、キツネは8万匹。ミンクは71万匹が毛皮のために犠牲になっているんです。かといって、私達が毛皮を使ったファッションを楽しめないわけではありません。

エコファー、エコレザーなど、動物を殺さずに身に着けられるアイテムは多くあります。

服を長く着る

1着の服を長く着ることは、私達が簡単にできるサステイナブルな取り組みのうちの一つです。私達が適切にケアをし、服をいまより1年長く着ることで、日本だけでも4万t以上の衣服の削減に繋がります。

また、レンタルサービスを使ったりという方法も、服を長く楽しむことに繋がります。

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受注生産・適切な在庫管理

人の服の購入枚数、廃棄枚数を調べると、購入枚数の方が多い、という調査結果がでています。また、全く売られずに捨てられる服は、年10億点と言われています。受注生産や適性な在庫管理を取り入れることは、サステイナブルな取り組みに繋がります。

フェアトレード

フェアトレードとは、公正取引のことです。日本の服の98%は輸入品で、その多くは海外の人件費や原材料が安い国の資源を消費することで作られています。

大企業が海外の労働者を違法な環境で働かせていた、というニュースを見たことがある人もいると思います。フェアトレードは、これから発展していく世界全体の豊かさを保つ助けになります。

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過剰包装をしない

日本でレジ袋が有料化されましたね。アパレルの世界においても、過剰包装は重大な問題です。企業だけでなく、消費者もエコバックを持ち歩くことなどでこの活動に参加できます。

日本の廃プラ排出量は2019年で850万トンでした。そのうち家庭からの排出が約半数を占めています。私達個人のちょっとした心がけで、環境に大きく貢献できます。

服の再利用

現在、衣服の70%以上がごみとして廃棄されています。1日に焼却、埋め立てされる衣服は、なんと1300tにも及んでいます。

衣服を必要としている人は世界中に沢山います。服を捨ててしまう前に、再利用しようという心がけを持つだけでも、サステイナブルな取り組みに貢献することができます。

捨てるのは心が痛むあなたへ。着なくなった服の活用法20選

サステイナブルな取り組みを見せる企業

サステイナブルファッションへの注目が集まってくる中、これまでファストファッションを展開していた企業も、続々とサステイナブルファッションへの取り組みを始めています。また環境省からも、サステイナブルファッションについてのレポートが出され、世界的な注目を集めています。

環境省のレポートはこちら

ユニクロ

ユニクロは、自社商品のリサイクル、回収などの取り組みを行ってきましたが、2020年より、リサイクルポリエステルを活用した商品の開発を行ったり、また、店頭でのプラスチック包装の85%削減を目指すなど、積極的な取り組みを見せています。

三陽商会

バーバリーなどの販売で知られる三陽商会は、スペインのブランド「ECOALF(エコアルフ)」と提携。新たに共同出資を行い、同社の持つサステイナブルなブランド商品を全面的にプロモートしていく姿勢を見せています。

ZARA(ザラ)

ファストファッションのイメージが強いZARA(ザラ)ですが、2025年までに、全ての製品をサステイナブルな素材で製造すると発表している。CEO自ら、ファストファッションとの決別を宣言し、会社をあげてサステイナブルファッションへの転換へと取り組んでいます。

サステイナブル ファッション EXPO

また1企業の取り組みではないですが、企業同士の取り組みとして、サステイナブルファッションEXPOが有名です。 サステイナブルファッションEXPOは、日本最大級のサステイナブル、エシカルブランドの祭典。サステイナビリティを考慮した様々なファッションアイテムが展示され、多くの企業が出展します。

サステイナブルファッションEXPOの公式ページはこちら

サステイナブルなファッションブランド

日本でも多くの企業がサステイナブルファッションに興味を持ち始めています。お洒落を楽しみながら、地球にも優しい身体にも優しいファッションをぜひ身に着けましょう

tennen(てんねん)

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tennen(てんねん)

tennen(てんねん)のコンセプトは、「ゴミにならず、土に還る服であること」。それも100%土に還ることを目指しています。ennenの服は天然素材。生地も、ボタンも、ネームも、全てが自然由来の素材で作られています。

コットンやウールなど、天然素材の特徴を活かし、肌触り、着心地を追求。そしてクリエイティブで気持ちいい服を作っています。

tennen(てんねん)のページはこちら

MERCI(メルシー)

MERCI(メルシー)

MERCI(メルシー)は、2011年に創業された、純国産のブランドです。国産のアパレルブランドは、わずか2%しかありません。生地にもこだわりをもち、CO2の排出量を減らす手段活用されている生地、染色で水の汚染をしない生地、動物を傷めない生地を使用。

縫製は、高い技術をもつ国内の工場で製造。オープンで透明性のある環境の中で、リアリティーのある情報を伝え、”流れて行く”だけの流行ファッションではない、新しいファッションを設計しています。

MERCI(メルシー)のページはこちら

sumigi(スミギ)-墨着-

『sumigi-墨着-』は、「着る」ことを通し心豊かな暮らしを送るお手伝いするために立ち上げたプロジェクトです。sumigiは一切の農薬や化学肥料を使わず栽培された天然のコットンと炭で100%オーガニック素材を使用し作られています。

お風呂へ浸かったときにほっと一息つくあの安心感のような温かさや穏やかさをsumigiで常に纏えるように細部までこだわりを持って制作しています。

『sumigi(スミギ)-墨着-』のページはこちら

おすすめの国産・海外エシカルファッションブランド15選!
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サステイナブルファッションの課題とは?

サステイナブルファッションは一見するといいこと尽くめのようにも聞こえます。しかし、本当にそうなのでしょうか。サステイナビリティは決して魔法ではありません。例えば、衣服のサイクルが長くなるということは、企業にとってはそれだけ成長が鈍くなる可能性も考えられます。

これまでの消費社会から、循環型社会に転換していくためには、それに対応する全体的なデザインが必要ですし、企業だけでなく消費者意識も必要です。今多くのアパレルブランドがサステイナビリティに舵を切っていますが、消費者の意識はまだ追いついていない部分もあります。

出典:知るギャラリー

上記は、インテージが、15~69歳の男女1,800人を対象に行った買い物意識に関する調査です。調査例えば、半分の方は衣服のトレーサビリティには関心がありません。またフェアトレードについても半分以上の方が関心を持っていません。

対して、自分の価値観にあうブランドについては、15%以上の方が高くても買うと回答しています。やはりアパレルブランドに必要なことは、しっかりと自分たちの価値観を打ち出し、サステイナビリティの価値を伝えていくことにあるのでしょう。

サスティナブルファッションを楽しもう

サスティナブルファッションを勉強すると、意外とすぐに自分に取り入れられることがわかります。ちょっと視線をかえると、今までの自分のファッションへの意識ががらっとかわります。

今もっている洋服を見直すいい機会にもなるでしょうし、新しいサービスにチャレンジすることで、環境への意識も高まります。サスティナブルファッションを取り入れるということはそれだけで気分ちが良いことでしょう。

エシカルファッションの意味や問題点と今日から出来る取り組みとは?

先進国のために工場で働く海外の方々

SDGsへの関心の高まりと共に、ファッション業界でもエシカルファッション(Ethical Fashion)という言葉に注目が集まってきました。ですが、エシカルファッションといきなり言われても、なんのことだかという方も多いはず。

今日はエシカルファッションの意味や現状や問題点、どうすればエシカルファッションの取り組みに参加できるのかなど、エシカルファッションについて詳しく解説していきたいと思います。

先進国のために工場で働く海外の方々

エシカルファッションとは

エシカルという言葉は、直訳すると「倫理的な」という意味です。エシカルファッションにおける倫理とは、人や地域、社会や地球環境に配慮し、良識的な考えを持つこと。エシカルファッションとは、こういった倫理感をもって、ファッションに対して行う取り組みを指します。

例えば、毛皮などを使わないアニマルフレンドリーな製品、無農薬で地球環境に配慮した素材で服を作ったり、またそういった製品を購入するということも、エシカルファッションに参加することになります。 SDGsにおいては、ファッションに限らず、消費全般についてエシカルな考えを持っていこう、ということでエシカル消費という言葉が使われています。これは、 2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、特にゴール12に関連する取組となっています。

エシカルファッションの基準

エシカルファッションには一定の基準があります。2006年に設立された、ファッション業界の社会と環境の基準を変革する共同運動の開発を目的とした団体 “Ethical Fashion Forum” において、10の基準が定められました。

  1. 安価で使い捨て型の「ファストファッション」に反対する
  2. 生産する労働者の賃金・権利・労働環境を守っている
  3. 持続可能な生活を支える
  4. 有毒農薬や化学物質の使用問題に取り組んでいる
  5. 環境にやさしい素材を使用、または開発している
  6. 水の使用を最小限にしている
  7. リサイクル、エネルギーやゴミ問題への取り組みをしている
  8. ファッションの持続可能性を開発・促進している
  9. 取り組みを報告し、解決策を広めようとしている
  10. 動物の権利を守っている

エシカルファッションとサステイナブルファッションの違いとは

エシカルファッションと似た言葉に、サステイナブルファッションがあります。両者の違いについてよくわからないという方もいるのではないでしょうか。サステイナブルファッションは、訳すと持続可能なファッションという意味になります。ファッションについて、生産や流通において自然や社会に配慮し、持続可能なファッションへの取り組みをさします。

両者は、生まれた背景や歴史は違いますが、取り組みとして重なっている部分が多く、両者は同じ意味でとらえられることも多いです。

サステイナブルファッションの意味とは?今日から出来る取り組みやブランドも紹介します。
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エシカルファッションとファストファッション

エシカルファッションを理解する時に、ファストファッションを理解するとより理解が深まります。ファストファッションとは、最新の流行を取り入れた、商品を安価な価格で、短期間で大量に生産、販売するビジネスモデルです。

ファストファッションは消費者にとっては、安く魅力的な服を手に入れられるため、とても人気があります。しかし、その裏では、大量の廃棄問題が発生したり、短いトレンドに合わせて服を大量生産するために、海外の劣悪な環境の工場を使ったりと様々な犠牲の上に成り立っています。

ファストファッションと労働問題

ファストファッションを語る時に、よく議論されるのが労働問題です。多くのファストファッションは、海外の賃金が安い縫製工場を利用して洋服を作っているので、人件費を削減して洋服を生産することができます。

エシカルファッションは上記のような低賃金労働問題を解決するものです。例えば生産者に対して適切な賃金を支払っていること、適切な労働環境を確保していることを重視した活動を行います。

ファッション業界における社会問題
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ファストファッションブランドが登場し、消費者は低価格でトレンドアイテムを手に入れられるようになりました。服の製…

環境問題にも対応するファッション

洋服を製造するにあたって製造工程によっては、環境に大きな影響を与えることがあります。洋服は綿を利用して作っています。綿を正常に育てるときには除草剤などを使用しないといけません。

発展途上国では必要以上の農薬を散布する地域もあります。また綿花の加工や染色をするときに科学物質が川に流れるといったトラブルも起こります。エシカルファッションは上記のような環境問題についても考えます。環境に負担をかけない製造方法を利用して洋服を作ります。そうすることによって川などを汚染せず地球の良好な環境を維持することを目指します。

エシカルファッションは人と地球環境に対応したファッションを指す言葉です

フェアトレードについて知っておこう

エシカルファッションに取り組む際は、フェアトレードを行いましょう。フェアトレードとは、直訳すると「公平な貿易」という意味になります。例えば、日本で販売されている安いコーヒーやチョコレートは、途上国で生産されたものを使用しています。安価な商品を生み出す場合、人件費を安くしたり、長時間労働をさせたりしてコスト削減をしている工場が多いです。

特にファッション業界でフェアトレードが注目されるようになったきっかけは、2013年の「ラナ・プラザ崩落事故」です。2013年、バングラデシュにおいて、8階建ての商業ビル、「ラナ・プラザ」が崩落しました。ラナ・プラザには、27のファッションブランドの縫製工場が入っており、そこで働いていた多くの若い女性が犠牲になりました。


この事故では、コスト削減を追求するため、ずざんな工事の上に建物が建てられ、違法な増築などを繰り返していました。多くの労働者達は違法な低賃金での労働を余儀なくされていたことが判明しましたが、ブランド側はそんな状況は知らなかったと否定しました。

上記のような安い賃金や長時間労働を強いられている弱い立場の労働者を守るために、フェアトレードは使われます。フェアトレードは認証ラベルが用意されていて、条件を満たしている各企業に交付されます。

エシカルファッションを行う際は、フェアトレードを行いましょう
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エシカルファッションに取り組んでいるブランド

アパレル業界においては、働く人だけでなく、服を購入する人についても、SDGsへの関心は高まっています。エシカルファッションに取り組んでいる日本企業やブランドは沢山ありますが、代表的な企業を上げておきます。

  • ユニクロ・・リサイクル、リユース、自然に配慮した素材開発
  • H&M・・リサイクルシステム「Looop」やペットボトルのリサイクル
  • しまむら・・商品廃棄ゼロ運動、環境配慮型副資材の導入
  • ZARA・・再利用可能資源の採用、プラスチック袋廃止
  • リーバイス・・節水加工技術の開発、リサイクル
  • パタゴニア・・リサイクル、農業技術開発など
  • 無印良品・・オーガニックコットン素材のシャツなど

この他にも、誰もが知っている多くの有名ブランドがエシカルファッションへの取り組みを行っていたり、また行政との協力、論文や研究が出されるなど、エシカルファッションを広げようという多くの試みが広まっています。

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最新の取り組み事例

また大手ばかりではなく、様々な企業がエシカルファッショへの取り組みを行っています。特に最近では、最新のテクノロジーと組み合わせたイノベーションが次々に起こっています。

インクジェットデジタル捺染機 エプソンMonna Lisa(モナリザ)

エプソンのMonnna Lisaは、アパレル製造における大量の廃棄水問題を解決するプロダクトです。ファッション業界は、世界の2番目に多くの水を消費し、なんと地球全体の水質汚染の原因の20%を占めるといわれています。

セイコーエプソンのインクジェットデジタル捺染印刷機「MonnaLisa(モナリザ)」 刷版洗浄に必要な水、廃棄インクの削減を実現しながら、精細なグラデーションや微妙な色調の再現を実現した革新的なプロダクトです。

Monnna Lisaの紹介ページはこちら

ブランドバッグの循環型シェアリングサービス「ラクサス」

ラクサスは、循環型のものを捨てない社会を目指すブランドバックのシェアリングサービスです。バッグを自由に交換してファッションを楽しむだけで、利用者はSDGsに貢献することができます。

世界最大級を誇るバッグの品揃えは、60ブランド40,000種類。全てのバッグが交換自由で定額使い放題。ラクサスは、これまで約6年間で55万回の貸し出しを行いましたが、現在廃棄になったバッグは一つもありません。(レディースが多いですがメンズも取り扱いがあります)

ラクサスの公式ページはこちら

国内初のエシカルファッションショップ・カチガワランドリー

カチガワランドリーは、日本に5人しかいない、型崩れしたシルエットを復元する技術を持つ職人が在籍するファッションショップです。ショップではただ単にエシカルにそった服を販売するだけにとどまらず、クリーニングやメンテナンスまで行っています。

長く丁寧に着るための洋服を納得して買うことができ、また服が疲れたらメンテナンスもすることができる画期的なショップです。

カチガワランドリーのショップはこちら

エシカルファッションジャパン

エシカルファッションジャパンは、日本初のエシカルファッション推進団体です。エシカルを当たり前として世間により広く認知
してもらうために、国内外のブランドのPRや情報発信、ワークショップやイベントの運営などを行っています。日本のエシカルな情報にふれたいと思ったら、一度覗いてみることをお勧めします。

エシカルファッションジャパンのホームページはこちら

エシカルファッションの課題とは

エシカルファッションという言葉は、とても耳障りがいいものです。エシカルファッションに関心を持っている、そんな自分がいることは、自分自身のブランド価値を高めてくれるように感じるかもしれません。しかし、まさしくエシカルファッション自体をファッションのように捉え、何かもを結びつけてしまうことで、かえって輪郭がぼやけてしまうということが業界では起こってきています。

また、エシカルなものは大量生産、大量消費には向いていません。エシカルなものばかりになっても、私たちは窮屈に感じるかもしれません。私達自身が本当にその取り組みに納得し、暮らしていくことが必要なのです。

エシカルファッションのために私たちにできること

では、エシカルファッションに私達が参加するためにはどういった取り組みを行えばいいのでしょうか。私達ができることで簡単なことは、エシカル認証マークが貼ってある製品、エシカルファッションに取り組んでいる企業の製品を購入することです。もちろん、店舗でも通販でも結構です。

また、服のリサイクルだったり、服を長持ちさせるなど、衣服を大切に扱うということからでも参加できます。本などで勉強したり、イベントに参加することも立派な活動です。

エシカルファッションに参加することは私達にとっては少し手間がかかることがあるかもしれませんが、それは長い目でみれば地球全体を豊かにすることに繋がります。


ファッションを愛するからこそ、ぜひエシカルファッションに関心をもっていただければ嬉しいです。

エシカル消費の問題点とは
エシカル消費の問題点とは
SDGsという言葉は大分一般に浸透してきたと思いますが、SDGsと共によく聞かれるのがエシカル消費という言葉。…